先日、私のブログに対して尊敬する先輩からこんなコメントをいただきました。
「書かれている事の実行は、上司の意思と、上司の会議をプロデュースしてマネジメントかつディレクションする腕次第なので、それをどう磨くかが中々難しいところかも知れません」
まさにその通りだと思います。そして、この言葉は私が43年間の現場経験を通じて最も痛感してきたことでもあります。
方針は伝えた。やる気もある。なのになぜ、チームが変わらないのか——。
会議でいくら熱く語っても、翌週にはまた同じ報告が並ぶ。「頑張ります」「何とかします」——言葉は出てくるのに、行動が変わらない。
変わらないのは、会議のプロデュースが機能していないからです。
今回は、私が退職後に書いた著書の第7章——かつての部下11名が寄せてくれた証言——から、チームを動かす「会議の本質」についてお伝えします。
「削れ」と言わずに、どう削ったのか
Tさんはディスカウントストアを専門に担当する部署で、私の下でマネージャーを務めていた方です。
当時、会社から販促費の削減を強く求められていました。上から「削れ」と言えば簡単です。でも私はそうしませんでした。
代わりに、各ブランドの利益構造をメンバーと一緒に徹底的に分析し、こう問いかけました。
「この商品は週末のチラシだけで十分だと思わないか?」
「この補償をなくしても売上は落ちないのでは?」
Tさんはこう証言しています。
「言われた通りにするのではなく、自分たちの頭で考え、最善策を探すことが当たり前になっていきました」
これが会議プロデュースの核心です。答えを渡すのではなく、問いを設計する。そうすることで、メンバーは「やらされる側」から「考える側」へと変わっていきます。
上司との会議でも、現場の声を届ける
Tさんの証言にはもう一つ、印象的な場面があります。
支社長との販促費削減の会議で、私は意見がぶつかっても、納得できないことには徹底して自分の考えを主張したというのです。
「著者のその姿勢は、私たち部下にとって『現場の声を大切にするとはどういうことか』を学ぶ場でもありました」
会議は、上の意向をそのまま下ろす場ではありません。現場の実態を正確に届け、最善の判断を引き出す場です。そのプロデュースを、私はマネージャーとして担っていました。
「車の中」も対話の場になる
もう一つ、Tさんが強く覚えていると語ってくれたのが、移動中の車内での対話です。
当時の担当エリアには遠隔地の得意先が多く、車での長距離移動の際、仕事の進め方だけでなく、支社の他チームの動き、さらにはプライベートの話まで——とにかく話す時間を大切にしていたと証言しています。
会議室の中だけが「場」ではありません。移動時間も、廊下の立ち話も、対話の場として機能させる。これもプロデュースの一つの形です。
評価の場を、育成の場に変える
T2さんの証言には、「仮想マネジメント体験」という言葉が登場します。
私が担当していたチームでは、仕事の内容すべてにゼッケン(担当者名)を付けて各メンバーに割り振り、毎月の評価運営にもメンバー自身を参加させていました。
「メンバーの立場なのに、パートナーの評価査定に参画していたことが一番驚きました」
評価の場を、評価するだけの場にしない。見る側・考える側に立たせることで、仕事への解像度が上がる。これも会議プロデュースの発想から来ています。
「忌憚ないディスカッション」ができるチームをどうつくるか
T3さんは私のマネジメントについて、こう証言してくれました。
「皆で考える場を設けていただきながら、チームで忌憚ないディスカッションができるチームをつくり上げられました」
誰もが本音を言える場はどうすれば生まれるか。それは偶然ではありません。リーダーが意図的につくるものです。
私が心がけていたのは、メンバーの発言を頭ごなしに否定しないこと、自分が現場に積極的に出て何が起きているかをリアルに把握すること、そして問いかけを通じて「考えた結論」を本人の言葉で語らせることでした。
会議プロデュース力とは何か
11名の証言をまとめると、私が実践してきた「会議のプロデュース・マネジメント・ディレクション」の本質は、次の5つに集約されます。
① アジェンダを「問い」で設計する
答えを渡す会議ではなく、考えさせる問いを準備する。
② 上にも現場の声を届ける場にする
会議は上意下達の場ではなく、現場と経営をつなぐ場である。
③ 場は会議室の外にも広げる
移動時間・同行訪問・立ち話——すべてが対話の場になりうる。
④ 評価・報告の場を育成の場に変える
参加させ、考えさせ、自分ごとにする仕掛けをつくる。
⑤ 心理的安全性を意図的に醸成する
本音が出る場は偶然に生まれない。リーダーの設計から生まれる。
「仕組み」はリーダーが会議をどう使うかで決まる
どれだけ優れた仕組みを設計しても、それを機能させるのは会議の場です。メンバーが自分の頭で考え、意見を言い、行動に移していくプロセスは、すべて「場のプロデュース」によって生まれます。
先輩がコメントで指摘された「腕次第」という言葉——その腕を、私は43年間の現場で磨いてきました。
仙台では販促費削減の議論を問いかけによってメンバー主導の改善活動に変え、京都では若手チームとの対話を通じて全国最下位からNo.1へ、神戸ではブランドマネージャー業務を任せ切ることでメンバーが自ら考え動く組織をつくりました。これらすべての根底に、会議・対話の場をどう設計し、どう動かすかという実践がありました。
これが、私がコンサルで提供できる強みです
Sales Sparkとしてルート営業の仕組み化コンサルを行う上で、私が最も自信を持って提供できるのが、この「会議のプロデュース・マネジメント・ディレクション」です。
仕組みを導入しても機能しない、研修を実施しても現場が変わらない——その多くは、会議の場が変わっていないことが原因です。
私が外部コンサルタントとして入ることで、できることがあります。
現在の会議の構造を客観的に診断する
「答えを渡す会議」から「問いで考えさせる会議」へ転換する
マネージャーが問いかけを使いこなせるよう伴走する
メンバーの発言が自然と増え、自走が生まれる場をつくる
これは理論ではありません。43年間、自分の現場で繰り返し実証してきたことです。そして退職後も、11名の元部下たちが「今も活かしている」と語ってくれた再現性のある手法です。
まとめ
会議が変わると、チームが変わります。
「頑張ります」で終わる会議から、「次にこう動く」が生まれる会議へ。その転換は、会議の目的を変えることではなく、リーダーが「問いの設計者」になることから始まります。
11名の元部下たちが異口同音に語った言葉を、最後にご紹介します。
「当時学んだことが、今も活かされています」
それが、真のマネジメントが持つ再現性の証明だと、私は信じています。
本記事の内容は、拙著「絶対に予算達成するルート営業の仕組み化」第7章により詳しく掲載しています。
Sales Spark 代表 浅井清司

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