売上目標に追われると、営業はどうしても「お得意先から、もう一声いただく」方向に向かいます。真面目で責任感の強い社長ほど、その傾向が強い。実はかつての私も、まったく同じでした。今日は、仙台での自分の失敗と、そこから学んだ一番大きな発想の転換の話をさせてください。
私はサントリーで43年間、営業の現場に立ってきました。その中でも仙台時代は、いま振り返っても自分の営業観が根本から変わった、大きな転機でした。
01「獲りにいく」営業に、行き詰まっていた
当時の私は、とにかく短期的な売上を追っていました。今月の数字、今週の数字。お得意先を訪ねては「もう少し発注を」「この商品をあと何ケース」とお願いする。頭の中にあったのは、いかに自社の商品を多く置いてもらうか、それだけでした。
もちろん、真剣でした。手を抜いていたわけでも、努力が足りなかったわけでもありません。それでも、数字は思うように伸びませんでした。いま思えば当然です。私はお得意先を、売上を”獲りにいく相手”としか見ていなかったのですから。
この「獲りにいく」営業には、限界があります。相手のパイは決まっているので、そこから多く取ろうとすれば、いずれ押し引きの消耗戦になる。価格の交渉に疲れ、関係はぎくしゃくし、担当が代わればまた一から。頑張るほど、お互いが疲れていく——それが行き詰まりの正体でした。
02視点を「相手が伸びるには」に変えた
あるとき、発想を根本から変えました。「どうすれば自社の商品を置いてもらえるか」ではなく、「このお得意先の店が、どうすればもっと売れるようになるか」を考えるようにしたのです。
仙台で担当していたのは、ディスカウンターでした。そこで私は、自社商品の売り込みをいったん脇に置き、その店そのものの売上を上げるお手伝いに徹してみることにしました。
お得意先は、売上を奪い合う”相手”ではなく、一緒に伸びていく”パートナー”。相手の店が儲かれば、その中で自社の売上も自然に伸びていく。パイを奪い合うのではなく、パイそのものを一緒に大きくする——この発想の転換が、すべての起点でした。
03やったのは、店頭の「科学化」だった
では具体的に何をしたか。感覚や気合ではなく、店頭で起きていることをデータとして捉え、根拠を持って改善する——いわば「店頭の科学化」を、お得意先と一緒に進めました。
動線調査の実施
お客様が店内をどう歩くかを実際に調べ、人が通る場所・通らない場所を可視化した。
陳列場所の指導と分析
どの場所に置くと、どの商品がどれだけ売れるかを分析し、置き場所を根拠を持って提案した。
店頭活性化セミナー
店の売場づくりの考え方を、現場の皆さんと共有する場をつくった。
効果的な特売の打ち方
やみくもな安売りではなく、何を・いつ・どう打てば効果が出るかを一緒に設計した。
大事なのは、これらがすべて「自社商品を売るため」ではなく、まず「その店の売上を上げるため」の取り組みだったということです。動線を調べ、売れる場所を分析し、特売を科学する。店全体が活性化すれば、その中で自社商品も動く。実際、店の数字が上がるにつれ、私が「置いてください」と頼まなくても、自社の売上はついてきました。
04関係が「対立」から「協力」に変わった
この取り組みで一番変わったのは、数字よりも、お得意先との関係そのものでした。
発想を変える前
自社商品を置いてもらうお願いが中心。価格交渉の消耗戦になり、関係は対立しがちで、数字も頭打ちだった。
✓ 発想を変えた後
店の売上を一緒に上げる関係に。お得意先が”味方”になり、相談される存在に変わった。結果として自社の数字も伸びた。
「あの商品を置いてくれ」と頼み込む相手から、「どうすればうちの店はもっと売れる?」と相談される相手へ。この立ち位置の変化こそが、短期の数字を追っていた頃には決して手に入らなかった、いちばん大きな財産でした。仙台の組織が立て直っていったのも、この発想の転換が土台にありました。
05「お得意先と一緒に伸びる関係」を、自社でどうつくるか
「相手の成長を支援すれば、自社も伸びる」——言葉にすればシンプルですが、目先の数字に追われている最中に、この発想へ切り替えるのは簡単ではありません。しかも、何を・どこまで支援すれば自社の売上につながるのかは、業種やお得意先との関係によってまったく違います。
まずは、あなたの会社が「獲りにいく営業」になっていないか、お得意先とどんな関係を結べば一緒に伸びられるかを、一緒に整理するところから始めるのが近道です。相手の成長を、自社の成長に変える。その設計図を、いっしょに描きましょう。
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Sales Spark 代表/浅井清司
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