「会いたかったんです」——
老舗バーで起きた、忘れられない偶然
「あ、会いたかったんですよ」
思わず口をついて出た一言でした。名刺交換をしたその方は、明らかに驚いた顔をしていました。それはそうです。初対面のはずの相手から、開口一番そんな言葉をかけられたのですから。
松山支店長に着任したばかりの頃の話です。
赴任してすぐ、前任者からの引き継ぎで、地元では知らない人がいないほどの、全国的にも有名な老舗バーに連れて行ってもらいました。物静かなマスターと、気さくで笑顔の素敵な女将さん。大繁盛の店で、「行きつけにしたくても、なかなか入れない」という声もよく聞くほどでした。
松山は、当時の私にとって外様も外様。地元の有力企業の方々にどうやって顔を覚えてもらえばいいのか、正直まったく分かりませんでした。そんな中で唯一、自分の足で通い続けられる場所が、そのバーだったんです。
ずっと会いたかった人が、隣にいた
地元のインナーサークルと呼ばれる会合があり、そこに参加するには推薦者が必要でした。会を運営していたのは地元の広告会社の社長。何とかその方に会う方法はないかと、ずっと機会をうかがっていました。
ある晩、そのバーに地元の有名企業の社長が来店しておられたので、ご挨拶にいきました。すると、その方と一緒にカウンターで飲んでいたのが——まさに、ずっと会いたいと思っていた、あの広告会社の社長だったのです。
名刺を渡す手が、少し早口になっていたと思います。「会いたかったんですよ」。気づいたら口に出ていました。
その後、いろいろな経緯を経て、無事にそのインナーサークルの会に参加できるようになりました。今振り返っても、あの夜の出会いがなければ、松山でのその後の人脈の広がり方は、まったく違うものになっていたと思います。
それは、本当に「偶然」だったのか
こう書くと、ただ運が良かっただけのように聞こえるかもしれません。でも、少し種明かしをさせてください。
実はそのバーには、週一程度のペースで通っていました。知らないお客さんが店にいると、女将さんに「どなたですか」とそっと尋ね、教えてもらったら、すぐにご挨拶に行く。それをただ、地道に繰り返していただけなんです。
「松山の仕事は露口さんから始まり、露口さんで終わる」——当時、そう感じるほど、そこは松山の社交場のような場所でした。
あの夜の”偶然”は、きっと偶然ではありません。毎週欠かさず通い、誰が来ても挨拶をするという小さな行動を積み重ねていたからこそ、たまたまその場に居合わせることができた。もし通う頻度が月に一度だったら、きっと出会えていなかったはずです。
営業の「運が良かった」は、たいてい、続けていた小さな行動の延長線上にある。
偶然を、待つのではなく、呼び込む
営業をしていると、「たまたま」「運良く」としか言いようのない出会いや展開が、本当にたくさんあります。でも、その”たまたま”が起きる場所に、そもそも自分がいなければ何も始まりません。
通い続ける。挨拶を欠かさない。誰かれ構わず声をかけてみる。そうした小さな行動の総量が多い人ほど、結果として「偶然」に出会う回数も増えていく——そんなふうに、今は思っています。
このシリーズでは、私がこれまで営業の現場で出会ってきた「偶然」のエピソードを、何回かに分けてご紹介していきます。次回は、生産関係の会社にご挨拶に伺ったら、その会長が偶然にも商工会議所の会頭だった——という話です。
「偶然」を呼び込む行動の仕組み、チームでも再現できます。
まずは無料相談で、貴社の営業の現状をお聞かせください。

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