「神戸で学んだ、人のやる気は”仕組み”で上がる──ダブル責任制がパートナーを変えた」

「もっと意欲的に動いてほしい」と思う相手ほど、やる気は”気持ち”の問題だと考えてしまいがちです。けれど私が神戸の現場で学んだのは、人のモチベーションは、根性論ではなく”仕組み”で上がるということでした。しかも、動かしたのは相手ではなく、こちら側の仕組みだったのです。

私はサントリーで43年間、営業の現場に立ってきました。神戸を担当していたとき、大きな課題がありました。店頭で自社製品をお客様により知っていただくための活動をしてくれる、関係会社の社員の皆さん——いわば現場の最前線に立つパートナーの方々の、やる気が上がっていなかったのです。

01「やる気が足りない」のではなかった

最初は、意欲の問題に見えました。けれど、よく観察してみると、そうではありませんでした。彼らのやる気が上がらない原因は、はっきりしていたのです。

やる気が上がらない、本当の原因

  • 何をどうすればいいのか、明確な指示が下りていなかった
  • どうすれば評価されるのかが、まったく不透明だった
  • 自分の頑張りが、誰にどう見られているのか分からなかった
  • 結果として「やってもやらなくても同じ」という空気になっていた

これでは、やる気を出せというほうが無理です。人は、何を期待され、何をすれば認められるのかが見えないとき、力の出しようがありません。彼らの意欲が低かったのではなく、意欲を発揮できる状況が、こちら側に用意できていなかったのです。

モチベーションは、相手の心の中だけの問題ではありません。「何を期待されているか」「どうすれば評価されるか」が明確で、自分が見てもらえていると感じられること。その条件を整えるのは、マネジメントする側の仕事です。

02変えたのは、相手ではなく「こちらの責任の持ち方」

そこで私が手を打ったのは、パートナーの方々を叱咤することではありませんでした。彼らをマネジメントする自社側の社員の「責任の持ち方」を変えたのです。これを私は「ダブル責任制」と呼んでいます。

一人の社員が、二つの軸で責任を持つ。この二軸で全体を見る形にしました。

責任軸 その1

エリア

姫路地区、阪神地区など、担当する地域に責任を持つ。

責任軸 その2

商材

ビール、スピリッツなど、担当する商品カテゴリーに責任を持つ。

それまでは、自分の担当エリアのことだけを見ていればよかった。それを、エリアと商材の両面から責任を持たせることで、社員は自分の狭い持ち場だけでなく、全体を俯瞰して考えざるを得なくなりました。この「視野が変わったこと」が、思いがけない連鎖を生みました。

03視野が変わると、人への関心が生まれた

面白いことに、責任の範囲を二軸に広げた結果、社員の中で起きた変化は「管理が増えた」ことではありませんでした。全体を俯瞰するようになったことで、それぞれのパートナーが今どういう状況にあるのかに、自然と興味を持つようになったのです。

1

責任を二軸にした/エリアと商材の両面で責任を持たせた。

2

視野が広がった/自分の持ち場だけでなく、全体を俯瞰して考えるようになった。

3

関心が生まれた/各パートナーの状況に、自然と興味を持つようになった。

4

対話が増えた/双方のコミュニケーションが格段に増えた。

5

やる気が上がった/見てもらえている実感が、パートナーのモチベーションを引き上げた。

人は、自分に関心を持たれ、きちんと対話してもらえるとき、力を発揮します。「見てくれている人がいる」というだけで、現場の空気は変わるのです。パートナーの方々のやる気を直接注入したわけではありません。こちらの仕組みを変えたら、社員の視野が広がり、関心が生まれ、対話が増え、その結果としてやる気が上がった——この連鎖こそが、神戸で得た一番の学びでした。

04放置していたら、どうなっていたか

もし「やる気がないのは本人たちの問題だ」と片づけていたら、どうなっていたでしょうか。現場の最前線が冷めたまま、いくら良い商品や施策を用意しても、店頭で力に変わらなかったはずです。そして「最近の若い人はやる気がない」と、原因を相手のせいにし続けることになっていたでしょう。

やる気の問題を、相手の性格や気持ちのせいにしている限り、状況は変わりません。変えられるのは、相手の心ではなく、こちら側の仕組みのほうなのです。

05「人のやる気を、仕組みで上げる」を一緒に考えませんか

あなたの会社にも、「もっとやる気を出してほしい」と感じている相手がいるかもしれません。社員かもしれませんし、取引先や協力会社の方々かもしれません。けれど、その人たちに「何を期待し」「どうすれば認めるか」は、明確に伝わっているでしょうか。そして、あなたやマネジメント側が、その人たちに十分な関心を向けられる仕組みになっているでしょうか。

まずは、あなたの会社で「やる気が上がらない」とされている場所が、本当に相手の問題なのか、それとも仕組みの問題なのかを、一緒に見極めるところから始めるのが近道です。人の心は動かせなくても、仕組みは変えられます。

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